Dave Holland Quintet 22-10-08

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Dave Holland Quintet

On 22 Oct. 2008 at BIMHUIS in Amsterdam

Dave Holland (b)
Chris Potter (ts, ss)
Robin Eubanks (tb)
Steve Nelson (Vib)
Nate Smith (ds)


1st Set
1) Step to It (D. Holland)
2) Soul Hart (C. Potter)
3) Veil of Tears
4)

2nd Set
5) Warning Devilsh
6) Force Circle (R. Eubanks)
7) Secret Garden (D. Holland)
8) Messed Tune (C. Potter)

Encore
Easy Visit

40分以上前に着いたのに階段を上がると上に売り切れのボードがたっていてキャンセル待ちの客が30人ほど入り口の前で並んで待っていた。 会場に入ると既に一杯で前列は何人もカメラマンが占領していてその中の知り合いの一人が手招きで私を呼び、今日は後ろから撮るからここに座ればいいわ、と一つ私に譲ってくれたから助かった。 一人でいれば売り切れの日でも一つぐらいはあいているのに、それに40分前なのに、なんと人気のあることか。 ステージに向かって左側、シロホンとバイブが並んでいる隙間が自分の正面ぐらいになるところ、これを互いに弾くネルソンとtbのユーバンクスの後ろにこの日の「真の英国紳士」が見えるあたりだ。 この「真の英国紳士」というのは私に席を譲ってくれたカメラマンがそれまで彼の隣で話していたプロのベースマンが私にホランドのことを話すときに使った言葉だ。

自分で楽器を演る者は同じ楽器を扱う他人の演奏の折にはその楽器に耳が向かいがちなようでソロは別として合奏の折も耳が他の楽器を押しのけて自分の贔屓の楽器の音を追うような傾向があるようだ。 例えば隣の50を越したベースマンはホランドに沿って自分の頭や絶えず動かす体の中でベースを弾いている。 1946年生まれのホランドより10歳若くホランドが本格的にベースをイギリスで勉強し始めその5年後マイルスのバンドに参加したころから追っているのだと言っていた。 さすが「真の英国紳士」だ、という隣人のその真意ははっきり理解しかねるがそれはホランドの音楽に対する態度のことをいうのだろうと推察した。

温和で絶えず周りを気づかい自分の音楽を追いつつ若手をサポートする、協調的ではあるけれど自分の音楽をはっきり打ち出すという、はっきりとしたエゴを前面に押し出して「あざとさ」が見えるような「がむしゃら」なジャズでないところに私の隣人の「真の英国紳士」がいるのかもしれないと想像した。 ホランドのキャリアをみても革新競争を支える技量に基づき同じく革新的な同僚ミュージシャンと皆強靭なエゴを内に抱えつつ自分のジャズを演奏してきたのだから「温和」だけで済んだわけはない。 

70年代後半に一度ミンガスの楽屋に行ったことがある。 開演前のだだっ広い控え室でミンガスが部屋の真ん中でパイプ椅子にどっかと座りミンガス夫人があちこち動き回りなにかと世話を焼いて御大は気力も体力もなさそうだった。 若手のミュージシャンは端のほうでタバコをすったり時々は御大のほうをちらちら覗いているようだったのだがそこには和気藹々の雰囲気は全くなく、畏怖と従順が充満していたのだがその日のステージは驚くほど素晴らしいものだった。 ベースの統率力は各自メンバーの技量を極限まで搾り出させる将軍のもので将軍は絶えず前線にいて兵隊を指揮するのだった。 そのときに控え室のメンバーの眼差しの意味が分ったような気がしたのを覚えている。

本来ベースマンは地味なのだ。 ドラマーと並んでタイムキープの役割があるもののドラムの華やかさに対して低音の音の連なりを聞くには少々耳の訓練が要るだろう。 それに、現代は殆どアンプを通すから装置、会場の制約が他の楽器より強くベースを聞くには周りの音を掻き分けて聴くような努力もいるだろう。 華やかなリードやホーンのソロの後ろでコードを分割、再編、リズムに変化をつけて全体の地ならしをしつつ自分の音をつくるのだ。  ソロの場合には勿論、ウッドの音色、音色、ベースマン個人のサウンドが充分聴けるにしても絶えず全体の中での役割を意識せざるを得ないだろう。 ミンガスの場合は絶えずミンガスがいて、いなくてもミンガスバンドがあるくらいだ。 ミンガスはアメリカ的なベースマンだといえる。

英国紳士も強固なエゴと意思を持っているのだがそれを実現する政治性に洗練があるのだと隣人は言う。 音楽上の生い立ちと血筋、いままでのキャリアと実践、経験が自然と回りに人を集まらせ、快刀乱麻で人を畏怖させるような必要がない。 マイルスやミンガスに絡めて言えばホランドはギル・エヴァンス寄りかもしれない。

この日の演奏ではこれまでここで何回か聴いたポッターの出来では一番よかった。 ソロの歯切れと持続力は演目の曲想によるのかもしれなくいくつも変奏を続けて会場の喝采を浴びた。 ネルソンは終始コードの変化を追ってベースが流麗でよく練られたソロを展開するときに効果的なサポートをしたし自分のソロの時には単調から複雑な音の力強いグラデュエーションを披露した。

コードやモードの展開で言えばユーバンクスもネルソンに沿って地味に展開するトロンボーンで、この人も80年代からのM-Base((Macro Basic Array of Structured Extemporization)理論の推進者だそうだ。 変調、変拍子を多用して従来のイディオムからの脱却を意図するジャズの革新理論らしいがそれは既にこの日のリーダーがそのキャリア上で彼の先人から受け継いで最前線で体現していることでもあり、80年代後半にスティーブ・コールマンやグレッグ・オズビーが中核としてこの運動を推進しているとすればそこにはホランドの影がない訳はない。

力強く後方で豊かなベースを続けるホランドに対照してドラムのスミスは新鮮で鋭利な太鼓を響かせる。 変拍子にすぐれフロントで絶えず変化する太鼓は新鮮だ。 ホランドはこういう太鼓が好きなのだろう。

このところ何人かフルベースの、茄子でいえば丸く膨れた下部、30%ほどを丸く削いで上部を残して小型にしたようなウッド・ベースを弾く人がいる。 私はホランドの太くて響きのいい大型ベースを好むのだが会場でこれを見たときに意外に思い少々残念に思いながらしかしライブ会場の制約を考慮すれば別段遜色のないバランスのいい音色だと満足したのだが、会が済んでから隣人のいうのには、あれはツアーの運搬のおり飛行機に乗せるのに昨今はあちこちで規制ができてこういうのにしないと運べないこともあるから、ということだった。 以前、セシル・マクビーに聞いた時もそういうようなことを言っていた。 

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